副業の確定申告は必要?必要な基準と確定申告の方法を解説

2023年06月07日

副業は基本的に「本業以外」で収入を得ることを指しており、本業よりもかける労力や作業時間が少なく、収入も少額です。そのため、確定申告をしたほうが良いのか悩んでしまう人は多いでしょう。

この記事では、副業の収入に関する確定申告の悩みを抱えている人のために、副業で確定申告が必要になる基準や確定申告をする前の準備、確定申告をする方法などを詳しく解説していきます。副業の収入でも確定申告が必要なのか知りたい、確定申告のやり方が分からないという方は、ぜひ参考にしてみてください。

副業で確定申告が必要になる基準

副業の確定申告が必要かどうかは、副業の所得の金額によって異なります。結論からいうと、副業で得た所得が20万円を超える方は、確定申告が必要です。

会社員などの給与所得者は基本的に、勤務先で行う年末調整で所得税の納税が完了するため、確定申告をしたことがないという人も多いでしょう。しかし、副業によって20万円以上の所得を得た場合には、本業の勤務先での年末調整とは別に、個人で確定申告を行わなければいけません。所得なので、経費を差し引きして20万円以下であれば確定申告は不要です。

収入と所得の違い

副業で得た所得が20万円を超えるかどうかが基準と解説しましたが、そもそも所得は収入とどう違うのでしょうか。収入と所得は、似ているようで異なる概念です。

収入は、個人や企業が稼いだすべてのお金に対して使われます。一方で所得は、個人や企業が税金を支払うために申告しなければならないお金のことで、経費などは含まれません。つまり、30万円の収入を得たとしても経費が11万円かかっていたとしたら、所得は19万円となり、20万円には届かないということです。

収入と所得の違いは確定申告をする上で重要なので、しっかりと把握しておきましょう。

副業で得られる所得の区分

税法上、所得には10種類の区分があります。その中でも副業をしている人に特に関係が深い所得の種類は下記の4つです。

  • 給与所得
  • 事業所得
  • 不動産所得
  • 雑所得

それぞれの所得の違いが分からないという方のために、ここでは、所得の区分について説明していきましょう。

給与所得

給与所得は、雇用主が労働者に支払う報酬のことです。簡単にいうと、副業でアルバイトやパートをしている人が会社からもらう給料などが当てはまります。具体的には、基本給、諸手当(交通費、残業手当、家族手当など)、ボーナス、退職金などです。

給与所得の算出は、下記の計算式で行います。

  • 給与所得 = 給与収入(源泉徴収前の金額)- 給与所得控除

給与所得には、給与所得控除や扶養控除などの税金の控除枠があります。所得控除の金額については、下記の表から算出可能です。

給与収入金額 給与所得控除額
162.5万円以下 550,000円
162.5万円〜180万円以下(A) A × 40% - 100,000円
180万円〜360万円以下(B) B × 30% + 80,000円
360万円〜660万円以下(C) C × 20% + 440,000円
660万円〜850万円以下(D) D × 10% + 1,100,000円
850万円〜 1,950,000円(上限)

事業所得

事業所得は、個人事業主やフリーランスなどの事業を営む際に発生した所得を指します。農業、漁業、製造業、卸売業、小売業、サービス業など、事業内容はさまざまです。継続して発生する際は、事業所得として計算します。

デザイナーやライターが仕事で得た報酬などはもちろん、Youtuberやアフィリエイトの広告収入なども事業所得となります。

事業所得の計算式は、下記の通りです。

  • 事業所得 = 事業による総収入額 - 事業に関わる必要経費

農産物・酪農などで得る「農業所得」とそれ以外の業種で得る「営業等所得」は分けて計算する必要があるため、どちらも行っている人は注意してください。

不動産所得

不動産所得は、土地や建物などの不動産、地上権や借地権などの権利といった、建物や土地などから得られる所得のことをいいます。船舶や航空機の貸付けなども、不動産所得に含まれます。

事業的な規模で行っていたとしても、不動産に関する所得は基本的に「不動産所得」の中に含まれます。しかし、旅館やホテルなどの経営をしている場合は、事業所得に含まれるので注意してください。これは、旅館やホテルは不動産を貸し出すことではなく、サービスの提供を主体としていることが理由です。

不動産所得の算出方法は下記の通りです。

  • 不動産所得 = 不動産所得に関わる総収入額 - 不動産所得に関わる必要経費

不動産所得に関する必要経費としては、固定資産税、修繕費などが挙げられます。

雑所得

雑所得は、所得の10種類の区分のうち、他の9種類に含まれない所得のことを指します。雑所得の中にも3つの種類があり、それぞれで計算方法などが異なるので見ていきましょう。

雑所得の種類 算出方法
公的年金等 公的年金等の雑所得 = 収入金額 - 公的年金等控除額
業務にかかる所得 業務にかかる雑所得 = 総収入金額 - 必要経費
その他の雑所得 その他の雑所得 = 総収入金額 - 必要経費

確定申告を行う際には、これらの所得の違いについて把握しておく必要があります。

所得20万円以下でも確定申告をしたほうが良いケース

これまで、所得が20万円以上だと確定申告が必要と紹介しましたが、例外として副業で得た収入が20万円以下でも確定申告が必要になるケースもあります。

例えば、源泉徴収税額が支払った税額よりも少ない場合や、医療費控除や寄附金控除などの税金控除を受けたい場合です。確定申告は慣れないうちは大変かもしれませんが、控除で還付金が戻ってくる可能性もあるので、不安な方は行っておくと良いでしょう。

また、今後年間の所得が20万円を超えそうな方は、万が一のために確定申告をしておいたほうが安心です。

住民税の申告は必要なので注意

ここまで、申告の必要有無やその種類について説明をしてきましたが、一点見落としがちな申告があります。それが「住民税」です。副業の収入・所得の合計が年間20万円以下であれば申告が不要になるのは、あくまでも「所得税」に限ってのことです。

市区町村に支払う住民税に関しては、20万円ルールのような特例措置がないので、住民税は別に申告しなくてはなりません。確定申告をしなくても良い場合でも、少しでも収入があれば、住民税の申告を忘れないようにしましょう。

副業による所得と所得税の計算方法

副業による所得はすべて、本業の給与所得と合算して年間の所得金額を算出する必要があります。所得金額の計算というと、難しく感じてしまうかもしれませんが、下記の3つのフローで行えば問題ありません。

  • 本業と副業の所得金額を計算する
  • 課税される所得金額を算出する
  • 所得税を計算する

それぞれ詳しく見ていきましょう。

本業と副業の所得金額を計算する

先述したように、収入から経費を差し引いた金額が所得となるため、まずは所得金額から計算する必要があります。所得金額の計算式は、下記の通りです。

  • 所得金額 = 収入 - 経費

給与所得の場合は、給与収入から給与所得控除額を差し引く形で算出します。給与所得控除額は、給与収入額によってその金額が変動します。前述の「給与所得」の見出しで表でまとめているので、参考にしてみてください。

課税される所得金額を算出する

次に、課税される所得金額を計算していきましょう。計算式は下記のようになります。

  • 課税される所得金額 = 所得金額 - 所得控除

所得金額から所得控除を差し引くと、簡単に課税所得が算出できます。控除には、一定の所得以下の納税者すべてが受けられる48万円の「基礎控除」や、青色申告で所定の条件を満たした場合に受けられる最大65万円の「青色申告特別控除」などもあるので、よく確認しておきましょう。

所得税を計算する

最後に所得税を計算しましょう。算出方法は下記の通りです。

  • 所得税額 = 課税される所得金額 × 所得税率 - 控除額

先ほど計算した課税所得金額に所得税率をかけて控除額を引くと、納めるべき税金の金額が分かります。

所得税率は、課税される所得金額に応じて7段階に分かれており、国税庁の発表する速算表に則り5〜45%課税されます。なお、2037年までは「復興特別所得税」として、その年分の基準所得税額の2.1%も合わせて徴収されるので、こちらも覚えておきましょう。

副業の所得を確定申告の事前準備

所得や所得税の計算方法について把握したところで、実際に確定申告を行う際の準備を進めていきましょう。副業の所得を確定申告する際に必要な事前準備はさまざまです。下記の項目ごとに見ていきましょう。

  • 開業届を提出する
  • 請求書や領収証などを保管しておく
  • 申告の種類を把握しておく

順番に解説していきます。

開業届を提出する

個人事業主やフリーランスとして働く場合は、事業を開業したことを知らせる開業届を税務署に提出する必要があります。副業の定期的な収入がある場合は、会社員であっても個人事業主として「開業届」を申請したほうが良いでしょう。

開業届を出すことは義務ではないので、提出しなかったからといって罰則を受けることはありません。しかし、本業以外の所得が年間で20万円を超える場合は確定申告が必要になり、そこで青色申告をする人は開業届の提出が必要となります。青色申告については、後ほど申告の種類で解説いたします。

開業届の提出は事業開始から1ヶ月以内とされているので、注意してください。

請求書や領収証を保管しておく

確定申告では所得額が重要になるため、経費などを把握するために請求書や領収証が必要になります。仕事で使うパソコンを購入した、打ち合わせに交通費がかかったなど、仕事に関するお金が発生した場合には、必ず請求書や領収証は捨てずに、確認できるところに保管しておきましょう。

申告の種類を把握しておく

確定申告には青色申告と白色申告があります。白色申告は青色申告よりも記帳方法が楽といわれることが多いですが、青色申告には白色申告にはないメリットがたくさんあります。それぞれの違いを把握して、自分に合った方法を選びましょう。

青色申告

青色申告は、所得から最大65万円の控除を受けられる青色申告特別控除が適用される、赤字の繰越が可能など、さまざまな節税メリットを受けられる申告方法です。

しかし、先ほど少し解説した通り、青色申告をするためには、事前に「開業届」と「所得税の青色申告承認申請書」を税務署に提出しなければなりません。さらに、原則として複式簿記(正規の簿記)での記帳が求められます。

複式簿記での記帳が大変なといった点などから、敬遠してしまう方も少なくありませんが、節税メリットが大きいことから選ばれることが多いです。デメリットとされる手間の煩雑さは、会計ソフトなどで解消できるので、節税したい方には青色申告をおすすめします。

白色申告

白色申告は、青色申告よりも記帳が楽、開業届を提出する必要がないなどのメリットがありますが、青色申告のような節税効果などは得られません。

以前までは、収入が300万円未満の方は記帳や帳簿保存を行う必要がありませんでしたが、2014年度からは記帳や帳簿保存をしなければいけなくなったので、「青色申告よりも記帳が楽」というメリットはあまり得られなくなっています。

申告は会計ソフトからでもできるので、時間や手間、コストなどを加味しても青色申告のほうがお得になる可能性が高いでしょう。

副業の収入を確定申告する方法

確定申告の事前準備が完了したら、実際に確定申告を行っていきましょう。副業の収入を確定申告する場合、やるべきことは以下の3つです。

  • 確定申告に必要な書類をまとめる
  • 必要書類に記入する
  • 必要な添付資料を提出する

確定申告の納期は毎年2月16日までとなっているので、手続きは早めに行いましょう。

確定申告に必要な書類をまとめる

確定申告をするためには、まず書類の準備をしましょう。所得の種類などによって必要な書類は多少異なりますが、基本的に下記の書類は必要とされます。

本人確認書類
  • マイナンバーが確認できる書類(マイナンバーカード、通知カードなど)
  • 身元確認書類(運転免許証、健康保険証、在留カード、パスポートなど)
確定申告書
  • 所得税及び復興特別所得税の確定申告書
所得金額が分かる書類
  • 青色申告決算書
  • 収支内訳書など(事業所得の内訳を記載している書類)
  • 年間取引計算書(株の取引によるもの)
  • その他、収入が明らかになる書類
各種控除証明書
  • 生命保険控除証明書
  • 医療費控除の証明書など
銀行口座が分かるもの 還付がある場合のみ

 

確定申告を行う際には、最低でもこれらの書類を用意しておきましょう。また、2020年以降は源泉徴収票の添付を求められることはありませんが、確定申告書で源泉徴収票の内容を記載する必要があるため、用意しておくと良いです。

必要書類に記入する

確定申告の準備ができたら、確定申告書を作成します。確定申告書には第一表と第二表があり、それぞれで記入内容が異なるため、ここでは記載する項目を紹介します。

 

【確定申告書第一表】

  • 収入金額等
  • 所得金額等
  • 所得から差し引かれる金額
  • 税金の金額
  • 還付される税金の受取場所

 

【確定申告書第二表】

  • 所得の内訳欄
  • 所得から差し引かれる金額に関する事項

 

確定申告書の作成には、確定申告ソフトや国税庁の「確定申告書等作成コーナー」の活用がおすすめです。

必要な添付資料を提出する

確定申告の提出方法には、大きく分けて下記の3つの方法があります。

  • e-Tax

e-Taxは、インターネットなどを利用してオンラインで確定申告ができる方法です。マイナンバーカードを持っている方、事前にID・パスワードの登録をした方が利用できます。24時間受付をしていて、いつでも提出できるのがメリットです。

  • 郵送

所轄の税務署または業務センターに郵送する方法です。管轄の税務署が業務センターに対応している場合は、税務署ではなくセンター宛に郵送してください。税務署に直接郵送できるのは、業務センターに対応していない場合だけです。

なお、確定申告書は親書扱いになるため、宅配便やゆうパック、ゆうメール、クリックポストなどは利用できません。普通郵便や書留などで郵送してください。控用の確定申告書と返送分の切手を貼付した返信用封筒を同封すると、収受日付印を押した控えが返送されます。

  • 持ち込み

所轄の税務署に確定申告書の提出用と控用を持っていって提出します。開庁時間内であれば、その場で提出日の収受日付印を押した控えを受け取ることが可能です。夜間などの窓口が開いていない時間帯は、時間外収受箱(夜間文書収受箱)に投函して提出できます。また、業務センターに直接確定申告書を持っていくことはできません。

副業の確定申告をする際の注意点

副業の収入を確定申告する方法について解説しましたが、ここからは確定申告をする際の注意点について紹介します。

  • 請求書や領収証は7年間保管する
  • 確定申告で副業をしていることが会社にバレる可能性がある
  • 確定申告をしないとペナルティが課されることもある

注意点を理解した上で、正しく確定申告を行っていきましょう。

請求書や領収証は7年間保管する

請求書や領収書、帳簿などは、7年間の保管義務があります。起点となるのは、事業年度の確定申告の期限の翌日です。

例えば、2021年1月に請求書や領収書を受け取ったとしましょう。2021年の取引に関する確定申告の期限は2022年3月15日なので、その請求書や領収書は2029年3月16日まで保管することになります。

つまり、7年間の保管義務といわれていますが、実質は8年ほど保管する必要があるので注意してください。また、場合によっては10年の保管義務が課されるケースもあるため、可能であれば、請求書や領収証は10年間保管しておくと安心です。

確定申告で副業をしていることが会社にバレる可能性がある

所得税の確定申告の内容は、その後の住民税の算出にも利用されます。会社員の住民税は一般的に、給与から天引きされるので、そこから副業をしていることが会社にバレる可能性があります。

副業を会社に知られたくない方は、所得税の確定申告書第二表の「住民税・事業税に関する事項」欄にある「給与、公的年金等以外の所得に係る住民税の徴収方法」欄の「自分で納付」にチェックを入れて申告を行ってください。

このチェックを入れることで、副業分の住民税の納付書が自宅に届くようになります。これを「普通徴収」といいます。企業が給与から天引きで徴収する方法は「特別徴収」です。

確定申告をしないとペナルティが課されることもある

確定申告の義務があるにも関わらず確定申告をしなかった場合、延滞税や無申告加算税などのペナルティが発生する可能性があります。確定申告の期間は、原則として所得が発生した翌年の2月16日~3月15日(土日祝の場合は翌平日)です。

確定申告の必要があるケースに該当したら、必ず期限内に申告をしましょう。もし、確定申告を忘れたりミスしていたりしたことに気づいた場合は、速やかに申告するようにしてください。

まとめ

副業をしている方は、所得が20万円を超える場合に確定申告が必要になります。個人や企業が稼いだすべてのお金を指す「収入」とは異なり、「所得」は個人や企業が税金を支払うために申告しなければならないお金のことで、経費などは含まれません。確定申告をする際には、収入と所得を混同しないように気をつけましょう。

所得が20万円を超えていなくても、源泉徴収税額が支払った税額よりも少ない場合や、医療費控除や寄附金控除などの税金控除を受けたい場合などは確定申告が必要になるので注意してください。

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